先日、高齢のお客様との雑談の中でこんな話がありました。お客様が信託銀行を利用して、ご自身の財産を特定のお子様に法定相続分を超過して承継させるための契約をなさったそうです。さらにはお子様がお客様より先に亡くなってしまった場合に備えて、お孫様がお客様の財産を承継する形態の契約を締結したようです。おそらくは今はやりの家族信託を信託銀行で締結したのでしょう。
上記の契約は高齢のお客様がお亡くなりになった際に、法定相続分より多く特定のお子様に相続させるのが目的です。確かになんら契約を締結せずにそのまま相続をむかえてしまった場合は、法定相続分より多くの財産を特定のお子様またはお孫様に承継させることはできません。目的を達成するため信託銀行で契約をしたのは一つの手段と言えます。
この場合の家族信託、実は遺言でも可能です。その名は「予備的遺言」。法定相続分を超えて財産を承継させたい特定の相続人が亡くなってしまった場合、他の相続人に新たに相続を承継させることができます。
例)亡くなった方の相続人が配偶者と子2名
○法定相続分
配偶者 | 2分の1 |
子A | 4分の1 |
子B | 4分の1 |
○遺言にて相続分を指定
※子Aが法定相続分を超えて2分の1の財産を相続します。
配偶者 | 4分の1 |
子A | 2分の1 |
子B | 4分の1 |
○子Aが遺言者よりも先に亡くなる
原則として遺言の効力は消滅し、子Aの子供である孫Aが法定相続分通りの4分の1の相続分を子Aに代わって相続する事になる。
○予備的遺言
「私の財産の2分の1をAに相続させる。Aが遺言者より先に死亡した場合はAの子の孫Aに2分の1を相続させる」といった内容を記載。
※直系のお孫様に財産を多く相続させたり、特定の不動産を承継させることができる。
このように予備的遺言を行っていれば、遺言者より相続人が先に亡くなってしまったなどの理由で、遺言の効力が消滅しまう事を防ぐことができるのです。
遺言にするメリットとしてあげられるのが費用です。公正証書遺言であれば15万円程度になります。信託銀行による相続手続きでは、200万円~300万円程度かかるようです。また、信託契約は複雑で一般の方には馴染みがないという点もあげられます。
財産を特定のお子様家系に承継させることがご希望の方は遺言による方法をご検討してみてはいかがでしょうか。