遺産分割協議では、相続人が話し合いにより財産の分配を行います。分配の割合や方法を決めるには、分配される財産の内容や性質を理解する必要があります。たとえば、現金を多く受け取るか、または長期にわたり賃貸収入を得る不動産を選ぶかなどの判断が必要です。
この判断能力が法律上欠けているとされるのが、成年被後見人と未成年者です。判断能力が不足しているため、遺産分割協議に参加すると不利な条件で協議が成立する可能性があります。
そこで、成年被後見人や未成年者に代わり、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらい、不利な遺産分割協議が行われないようにする制度があります。特別代理人が選任されるのは、利益が衝突する場合です。たとえば、親と子が遺産分割協議を行う場合、未成年者の場合、親権者である親が都合の良い遺産分割協議を行う可能性があります。そのため、未成年者と親権者の親が遺産分割協議を行う場合には、特別代理人の選任が必要です。
この構図は成年後見人と成年被後見人にも当てはまります。成年後見人と成年被後見人が遺産分割協議の当事者となっている場合、判断能力が欠けている成年被後見人が不利な遺産分割協議になる恐れがあるため、特別代理人の選任が必要です。
ただし、成年後見人に成年後見監督人が就任している場合、監督人が成年被後見人に代わって遺産分割協議を行います。この場合、特別代理人の選任は必要ありません。
特別代理人が選任された場合、成年被後見人や未成年者の相続分は原則として法定相続分以上の財産が分配されるようにする必要があります。これは、成年被後見人・未成年者が遺産分割協議で不利益を受けないようにするためです。
しかし、必ずしも法定相続分を確保することが未成年者にとって最善であるとは限りません。たとえば、高額な預金を未成年者が取得することに親が心配することがあります。また、大学の学費などを確保するために親が流動資産である預貯金を多く相続する方が良い場合もあります。特に配偶者が相続する場合、相続税の控除の恩恵を多く受けられます。相続税対策を考える場合、配偶者が多く相続する方が望ましいでしょう。未成年者が成人に達するまで数ヶ月であれば、成人を待ってから遺産分割協議を行うことも検討できます。