日本の相続に関する法律の規定は、相続が発生した場合に特定の相続人が他の相続人を出し抜いて単独で相続財産を独り占めする事が困難なようにできています(遺言がある場合を除く)。
仮に他の相続人に内緒で手続きをしようとしても、遺産分割協議書に他の相続人全員の署名捺印と、印鑑証明書が必要となります。また相続人の数をごまかそうとしても、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、原戸籍謄本及び相続人の現在の戸籍を提出しなければならないため、亡くなった方に相続人が何人いるのか隠すことが極めて困難なようになっております。相続人が一人でも手続きに欠けている場合には相続手続きはできません。この点では日本の相続に関する法律は非常によくできているといえます。
そのため長期に交流が途絶えて電話番号すら知らない親族であっても、相続人の一人に該当するのであれば相続手続きの協力が必要となります。このような理由から突然疎遠の親族の死亡の知らせが届くケースがあります。そして死亡のお知らせとともに、遺産分割協議書が同封されていて困惑をしてしまう方がいらっしゃるのです。
確かに疎遠とはいえ親族の死亡が知らされる事に加え、遺産分割協議書が同封されていれば驚くのは当然かと思われます。そして印鑑証明書を返送してほしいと記載されています。手紙の送り主が法律の専門家といえ、遺産分割協議書に実印で署名捺印した上に印鑑証明書も提出を求められれば、躊躇してしまうことでしょう。
上記のような場合にまず確認すべき点は3点になります。
- 遺産分割協議の記載で誰がどの財産を取得するのか
書類を郵送してきた法律家の依頼人が単独で取得する内容か、自分も取得者に入っているかなどをチェックします。これによって財産を放棄する形になるのか、ご自身も取得できるのかが変わってくるからです。 - 相続の対象となっている財産はどのようなものか
例えば不動産であればどこの不動産なのか、預貯金はいくらくらいあるのかなどです。 - 亡くなった被相続人に負債がどれくらいあるのか
とても重要なポイントです。しかしこれは遺産分割協議書の記載からは判明しません。相続人として信用情報の開示請求などを消費者金融や銀行などの金融機関に照会する事が可能なので、金銭の借入はある程度把握する事ができます。
大切なことは慌てずにしっかりと検討をして結論を出すことです。やみくもに署名捺印をすると、本来取得できた財産を放棄することになってしまいます。また、なにもせず無視をし続けると、老朽化した建物などの取り壊しや売却をすることができず、その建物が原因の被害で相続人が責任を負う可能性もあります。