人が亡くなり相続が発生した場合に、預貯金や株式は相続人名義の口座に入金をする事が一般的です。しかし、銀行口座や証券口座を相続人が保有していない場合もございます。こうしたケースでは、新たに銀行口座や証券口座を開設することで相続手続きを進めることができます。
しかし、相続人が日本人であっても外国に長く居住していて住民票が国内に存在しない場合、取引の安全性の観点から日本の銀行や証券会社は口座開設を認めていません。そのため、相続手続きが進められない状況が生じます。このような場合には、どのようにして手続きを進めればよいのでしょうか。
銀行口座について
日本人であっても、外国在住の期間が長い方は日本国内に銀行口座を保有していないケースは珍しくありません。しかし、相続手続きのためだけに日本で住民票を作るのは大きな負担となります。そのため、家族である他の相続人の誰かの使っていない銀行口座を、相続財産を管理する口座として利用し、そこに相続した預貯金を入金する方法が考えられます。この方法を利用する際には、遺産分割協議書に「相続財産を管理するために預貯金を入金する」ことを明確に記載する必要があります。
この方法を利用するには、相続人同士の強い信頼関係が必要です。日本の銀行は通帳を名義人以外の第三者に譲る事を禁止しているため、相続の手続きで入金された預貯金は、あくまで通帳の所有者が管理する形をとらざるを得ません。したがって、預貯金の管理を任せられるほどの信用が求められます。このような信頼できる相続人がいない場合には、この方法は利用できないでしょう。
証券口座について
証券口座は外国在住の日本人の方だけでなく、国内に居住している日本人でも保有していないケースが珍しくありません。しかし、大半の証券会社は相続手続きにおいて自社の証券口座の開設を求めることが一般的です。そのため、相続人が新たに証券口座を開設し、その口座に株式を移管する方法を採用している証券会社が多い印象です。
日本の証券会社に口座がない外国在住の日本人が株式を相続する手段としては、日本に証券口座を保有している相続人を代表者として、全ての株式を代表者の口座に移管する方法が考えられます。この場合も遺産分割協議書に「代表者として株式を管理する」という内容を明記する必要があります。
注意点
銀行口座の預貯金の相続でも、証券会社の株式の移管でも、遺産分割協議と異なる割合で特定の相続人名義の口座に入金・移管をする場合には、贈与税の問題が生じる可能性があります。そのため当事務所では、遺産分割協議の方法や記載内容について、税理士と十分な打ち合わせを行っています。