相続による不動産の名義変更にかかる時間は、お客様からよく尋ねられる質問です。しかし、相続人が配偶者と子供であるか、配偶者と故人の親であるか、兄弟姉妹であるかなど、相続人の構成によって、必要な時間は大きく異なります。これは、相続人の順位によって必要となる戸籍の量が変わるためです。相続人に外国在住の方がいる場合や、相続人間で相続分の取得に争いがあるなどの特殊な事例を除き、収集する戸籍の量が相続手続きの時間に大きな影響を与えます。
必要な戸籍の枚数は、相続人の順位が繰り上がるほど、必要な戸籍の量は多くなる傾向があります。戸籍収集の目安としては、配偶者と子供、または配偶者と故人の親が相続人の場合は2週間前後、配偶者と故人の兄弟姉妹、または独身で兄弟姉妹が相続人の場合は2ヶ月前後かかる傾向にあります。特に兄弟姉妹が相続人となる場合、相続人の数が多いためです。
戸籍は通常、郵送で請求しますが、郵便局が普通郵便の土日配達、翌日配達を廃止したため、遠方の役所からの請求では約10日程度かかることがあります。急ぎの場合は、速達で請求したほうが良いでしょう。上記の戸籍収集の目安は、速達で請求した場合を想定しています。通常郵便を利用すると、目安期間の倍以上かかる可能性があります。
戸籍、遺産分割協議書、印鑑証明書などの必要な書類が揃えば、法務局での名義変更の登記申請に進みます。法務局での手続き時間は局によって異なり、また混雑状況にも左右されますが、追加の書類請求や不備の修正がなければ、概ね10日から14日で完了することが多いです。
よって、戸籍の収集と法務局での手続きを合わせると、配偶者と子供、または配偶者と故人の親が相続人の場合は1ヶ月前後、配偶者と故人の兄弟姉妹、または独身で兄弟姉妹が相続人の場合は2ヶ月半前後が目安となります。
一般的に、名義変更の登記を急ぐ必要は少ないと思われますが、不動産の対抗要件は名義変更の登記です。遺産分割協議や遺言による単独取得が認められていても、他の相続人が登記し自己の持分を売却してしまうと、法的に不利な立場になることがあります。不動産を売却予定の場合は、名義変更の登記を余裕を持って行うべきです。名義変更の登記がなされていないと、不動産の売却を進めることはできません。