不動産の所有者が持っていた権利証は、所有者の方が亡くなると法的にどのように扱われるのでしょうか。結論から申し上げますと、不動産の所有者が生前に不動産を売却していたが所有権移転登記の前に亡くなったなどの一部の例外を除き、不動産の所有者の死亡とともに効力が無くなります。だからといって効力が無くなった権利証が無意味なものになるわけではありません。権利証をみることで、亡くなった方の不動産を特定することができます。
相続による名義変更の登記
相続による名義変更の登記では、登記されている亡くなった所有者の住所と亡くなった方の現在の住所の繋がりを証明する必要があります。ところが住民票などが保存期間満了により取得する事ができず、住所の繋がりが証明できない事はめずらしくありません。そういった場合に権利証を法務局に提出する事で、亡くなった方と登記上の所有者が同一人物であることを証明できます。
不動産を共有している場合
不動産が共有の場合は、亡くなった共有者の持分のみ効力が無くなります。つまり生存している共有者の持分は権利証としては依然として効力が残っています。この場合に亡くなった方の2分の1をもう一方の2分の1の所有者が相続による名義変更をしたとします。そうすると新しく相続した相続人名義の2分の1の権利証が発行されます。ここで問題なのは従来の古い権利証の持分2分の1の権利証と、相続によって新しく発行された2分の1の権利証の二つの権利書が存在することとなります。この二つの権利証はどちらも効力のある権利証のため、二つ併せて一つの権利証となるわけです。従って古い2分の1の権利証も、新しく相続によって発行された権利証のいずれか一つでも紛失した場合は、不動産の売却の際に支障をきたしてしまうので、いずれも大事に保管しておきましょう。